瓦屋根の瓦の種類と選び方は?
瓦屋根の瓦は、主に素材・表面仕上げ・形状で種類が分かれます。選ぶときは、見た目だけでなく、屋根の勾配、建物が瓦の重さに耐えられるか、地域の風雨や積雪、施工方法、予算を合わせて判断することが大切です。
瓦屋根の瓦は大きく3つの視点で分けられる
瓦の種類を比較するときは、「何でできているか」「表面をどう仕上げているか」「どのような形か」を順番に見ると整理しやすくなります。
| 分類 | 主な種類 | 選ぶときのポイント |
|---|---|---|
| 素材 | 粘土瓦、セメント瓦など | 耐久性、重さ、色や質感、現在の入手性 |
| 表面仕上げ | 釉薬瓦、いぶし瓦、無釉瓦 | 色、光沢、経年変化、汚れの見え方 |
| 形状 | J形、S形、F形など | 和風・洋風の外観、排水性、屋根勾配との相性 |
素材による瓦の種類
住宅の瓦屋根で中心となるのは粘土瓦です。一方、セメントを主材料とする瓦もありますが、既存住宅の補修では、現在の屋根材と同じ種類や形状を選べるとは限りません。
粘土瓦
粘土瓦は、粘土を成形して焼き上げた瓦です。表面の仕上げによって釉薬瓦、いぶし瓦、無釉瓦などに分かれます。
焼き物であるため、色や質感に特徴があり、適切に施工・維持された場合は長く使える屋根材です。ただし、瓦は比較的重量があるため、葺き替えや新築で採用する際は、屋根だけでなく建物全体が荷重に対応できるか確認します。
セメント瓦・コンクリート系の瓦
セメントなどを成形して作る瓦です。形状や塗装によって見た目が異なり、粘土瓦とは表面の劣化やメンテナンスの考え方が変わります。
塗装の状態や製品の生産状況は、商品や製造時期によって異なります。既存のセメント瓦を補修する場合は、同じ製品を現在も入手できるか、代替品で納められるかを施工業者に確認してください。
表面仕上げによる瓦の種類
釉薬瓦
釉薬瓦は、瓦の表面に釉薬を施して焼いた瓦です。釉薬によって色や光沢を出せるため、黒、茶、青、赤など外観の選択肢が比較的多いのが特徴です。
色や光沢を重視する場合に向いています。ただし、同じ色名でもメーカーや製造時期によって見え方が異なるため、カタログだけでなく実物サンプルで確認すると判断しやすくなります。
いぶし瓦
いぶし瓦は、焼成後にいぶすことで、表面に銀色から黒色に見える炭素の膜をつけた瓦です。落ち着いた和風の外観になり、瓦らしい質感を重視したい場合に選ばれます。
表面の色は均一とは限らず、製品や焼き上がりによって風合いが変わることがあります。新しい瓦だけで部分補修をすると、既存の瓦と色や質感が合わない場合があるため、見える範囲の仕上がりも確認します。
無釉瓦
無釉瓦は、釉薬を使わずに焼いた瓦です。代表的なものに、素焼きの風合いを生かした瓦があります。自然な色合いや経年変化を好む場合に向いています。
製品によって色の変化や表面の仕上がりが異なるため、採用前に施工後の経年変化について製造元や施工業者へ確認してください。
形状による瓦の種類
形状は、屋根全体の印象だけでなく、瓦の納まりや屋根勾配との関係にも影響します。代表的な形状はJ形、S形、F形です。
J形瓦
J形瓦は、波形のある伝統的な和瓦です。日本家屋らしい外観をつくりやすく、和風住宅や既存の和瓦屋根の補修に使われます。
瓦の山と谷があるため、屋根に立体感が出ます。葺き替えでは、現在の瓦がJ形か、寸法や働き幅が合うかを確認することが重要です。
S形瓦
S形瓦は、波の大きい形状で、洋風や南欧風の外観にも合わせやすい瓦です。屋根に大きな波が出るため、外観の印象を変えたい場合の候補になります。
ただし、同じS形でも製品ごとに寸法や施工条件が異なります。既存屋根への部分交換では、見た目だけでなく、隣り合う瓦との接続や納まりを確認してください。
F形瓦
F形瓦は、表面が比較的平らな形状の瓦です。直線的で現代的な外観になりやすく、和風・洋風のどちらにも合わせやすいタイプです。
平らに見えても、雨水を流すための重なりや排水の仕組みがあります。採用できる屋根勾配や施工方法は製品ごとに異なるため、屋根の形状に適合するかを確認します。
瓦屋根の瓦を選ぶときの5つの基準
迷ったときは、外観から決めるのではなく、建物の条件を先に確認します。特に葺き替えでは、現在の屋根を調査してから候補を絞るのが基本です。
1. 新築か、葺き替え・部分補修か
新築なら、屋根の勾配や下地、建物の構造に合わせて瓦の形状を選べます。一方、葺き替えや部分補修では、既存の瓦と寸法や形状が合うかが優先されます。
部分補修で異なる種類の瓦を無理に組み合わせると、雨水の流れや納まりに問題が生じるおそれがあります。まず、屋根に使われている瓦の種類、メーカー、寸法、破損範囲を調べてください。
2. 建物が瓦の重量に対応できるか
瓦は、金属屋根などの軽い屋根材と比べて重量があります。新たに瓦を載せる場合や、屋根の構成を変える場合は、柱・梁・小屋組みなどを含めて建物の構造を確認します。
見た目が気に入っていても、建物の状態や構造を確認せずに瓦だけを選ぶことはできません。必要に応じて、屋根業者や建築士に耐震性と荷重への対応を調査してもらいます。
3. 屋根の勾配と雨水の流れ
屋根の勾配とは、屋根の傾きのことです。瓦は種類によって、施工できる勾配や納まりが異なるため、屋根の傾きに合わない瓦を選ばないようにします。
特に、片流れ屋根や谷の多い屋根、複雑な形状の屋根では、瓦の種類だけでなく、棟や谷、壁際などの防水処理が重要です。候補の瓦が屋根の勾配と形状に適合するか、製品の施工要領を確認してください。
4. 地域の風雨・積雪・凍害への対応
海沿いで強風や塩害の影響を受けやすい地域、積雪が多い地域、寒冷地では、瓦の種類だけでなく固定方法や下地、防水納まりが耐候性に関わります。
寒冷地では、瓦に水分が入り凍結と融解を繰り返すことで、ひび割れなどが起きる凍害に注意が必要です。地域の気候に適した製品か、施工実績のある業者に確認してください。
5. 外観と将来の補修
瓦は、色・光沢・波の大きさ・表面の質感で住宅の印象が大きく変わります。外壁、サッシ、雨どい、周囲の景観との組み合わせを、実物サンプルで確認すると選びやすくなります。
同時に、将来割れた瓦を交換できるかも確認します。製品の販売終了やモデル変更により、数年後に同じ瓦を入手できない可能性があるため、予備瓦を保管できるか、代替品で補修できるかを施工業者に尋ねておくと安心です。
目的別に見る瓦の選び方
| 重視したいこと | 検討しやすい方向性 | 確認すること |
|---|---|---|
| 伝統的な和風の外観 | J形のいぶし瓦や釉薬瓦 | 既存の瓦との形状・色の相性 |
| 洋風や南欧風の外観 | S形の瓦 | 屋根勾配、外壁との色合わせ |
| 直線的で現代的な外観 | F形の瓦 | 製品の施工条件と排水の納まり |
| 自然な風合い | 無釉瓦やいぶし瓦 | 色の変化、経年後の見え方 |
| 色や光沢を選びたい | 釉薬瓦 | 実物サンプル、周囲の景観との調和 |
| 部分的に修理したい | 既存瓦と同じ種類・寸法の瓦 | メーカー、寸法、在庫、納まり |
瓦を選ぶ前に確認する手順
瓦の種類を決める前に、次の順番で屋根と建物の条件を確認すると、選び直しを減らせます。
- 目的を決める。新築、全面的な葺き替え、雨漏り修理、割れた瓦の交換のどれかを整理します。
- 既存屋根を調べる。瓦の形状、表面仕上げ、寸法、メーカー名、破損箇所を確認します。屋根に上る作業は危険があるため、専門業者に依頼してください。
- 建物と屋根の条件を確認する。構造の状態、屋根勾配、下地、防水紙、棟や谷の納まりを調べます。
- 地域条件を加える。強風、積雪、寒さ、塩害など、屋根に影響する環境を整理します。
- 候補を比較する。素材、表面仕上げ、形状、色、固定方法、補修のしやすさを同じ項目で比べます。
- 見積もりと施工内容を確認する。瓦代だけでなく、既存瓦の撤去、下地や防水紙の交換、棟の施工、足場などが含まれるかを確認します。
瓦屋根を選ぶときの注意点
「瓦ならどの製品でも交換できる」「瓦は重いから必ず危険」と一律には判断できません。建物の構造、屋根の状態、固定方法、地域条件によって適切な選択が変わります。
また、瓦そのものが丈夫でも、雨漏りは瓦の割れだけでなく、防水紙、下地、棟、谷、壁との取り合いから起こることがあります。瓦を選ぶときは、表面の見た目だけでなく、屋根全体の防水と固定の計画を確認してください。
最初に行うことは、既存屋根の瓦の形状と状態を専門業者に確認してもらうことです。新築や全面葺き替えなら、屋根勾配・建物の構造・地域の気候を前提に、J形、S形、F形と表面仕上げを比較すると、自宅に合う瓦を選びやすくなります。